2018年3月、帝国データバンク1 都 3 県・本社移転企業調査(2017 年)が発表された。2017年も、一都三県以外の地域(※以下地方)から一都三県(以下首都圏)に本社を移転する企業が、首都圏から地方へ移転する企業を上回る、首都圏への(転入超過)となった。転入超過は7年連続となった。
※本来は首都圏・中京圏・近畿圏を三大都市圏、それ以外を地方圏と定義するが、都合上ここでのみ、中京圏・近畿圏についても地方とする。
政府与党はこれまで選挙の度に地方創生とは言っているものの、東京一極集中に、全くと言っていいほど歯止めが効いていないのが現状だ。
首都圏に本社を移転した企業数・道府県トップ10
1. 大阪府 23.2%
2. 愛知県 8.7%
3. 茨城県 5.9%
4. 静岡県 5.5%
5. 兵庫県 5.5%
6. 北海道 5.2%
7. 福岡県 5.2%
8. 群馬県 4.8%
9. 福島県 3.8%
10.宮城県 3.5%
帝国データバンク 特別企画:1 都 3 県・本社移転企業調査(2017 年)による
2017年に地方から首都圏へ転入した企業は40県と、ほぼすべての県になる。
そのうち、最も多く首都圏に移転した地域は大阪府(23.2%)大阪府が飛び抜けて多いが、次に多かったのが愛知県(8.7%)で、愛知も大阪に続いている状況だ。
また、4位には静岡、5位は兵庫など、中京圏・近畿圏やその周辺が続いており、名古屋・大阪を中心とした地域から首都圏の移転が相次いでいることがわかる。
次に、逆に首都圏から地方へ移転した移転先企業、道府県トップ10を見てみる。
1. 茨城県 14.3%
2. 大阪府 14.0%
3. 愛知県 7.9%
4. 福岡県 6.5%
5. 静岡県 5.7%
6. 栃木県 5.0%
7. 北海道 3.9%
8. 京都府 3.2%
9. 山梨県 3.2%
10. 長野県 3.2%
帝国データバンク 特別企画:1 都 3 県・本社移転企業調査(2017 年)による
1位から3位には、転入・転出において、茨城・愛知・大阪3府県が入っており、転出・転入共に入れ替わりが激しいことがわかる。
しかし上のデータは各道府県ごとの首都圏への転入及び首都圏からの転出先、道府県別企業数を単純に比較したものなので、全体の企業数の多い愛知・大阪がトップに入るのは当然である。そこで、国税庁法人番号公表サイトから各道府県の株式会社数を出し、それを各道府県の転出・転入会社数で割って、各道府県ごとの首都圏への転入・転出の割合を出してみた。
次に ①地方から首都圏への流出から②首都圏から地方への流出を引き、変動分を出した。
参考:帝国データバンク 特別企画 1 都 3 県・本社移転企業調査(2017 年)による
参考:国税庁法人番号公表サイト
以上のデータから分かることは、大阪では、首都圏への流入が、首都圏からの流入を大きく超えて、マイナスに転じていることだ。
近年、記憶に新しいこととして、2017年7月、大阪では天下の優良企業パナソニックの重要分社の樋口社長が「『門真』発想ではもう限界。すぐに東京に行くことを決めた」と脱大阪を宣言した。
一方で愛知県では2017年11月、コメダ珈琲店の社長とブラザーの社長が対談をし、プレジデントオンラインに「名古屋企業が東京移転を検討もしない理由」という記事を掲載した。
また、
一方で、総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告 平成29年(2017年)によると、転入超過数の市町村順位において、
東京特別区部(61158人)、大阪市(10691人)、名古屋市(4874人)となり、三大都市の中でも名古屋市への転入は低いことが分かる。
また、大阪府南部の堺市(-2211人)寝屋川市(-1081人)などで大幅に人口減少が進む。大阪圏の中核都市である神戸市は(-1507)と全国の市町村においてワースト5位、加古川市(-1086)など、大阪郊外で人口減少が進み、大阪圏では、大阪一極集中が進んでいることが分かる。
まとめ
人口減少時代において、日本全体が衰退していく中で、今までの東京、大阪、名古屋という順序が崩れ始めている。2027年のリニア中央新幹線の名古屋-東京間の開通に向けて、名古屋では不動産地価が大幅に上昇し、名古屋の商業地最高地点が大阪の最高地点を抜く、名阪逆転現象も見られるなど、3大都市の勢力にも変化が現れてきた。
しかし、東海地方全体を見てみると、愛知一極集中という問題を抱えていることが見えてくる。
東海地方は、3大都市の1つでありながら、東京・大阪の中間に位置し、東海道の中心地でもあることから多くの人々が通過する地点でもある。この近畿地方や関東地方にはない利点を活かし、人の流れを岐阜、三重、静岡などに波及させ、愛知一極集中を是正することが必要となってくるだろう。
首都圏一極集中の時代において、政府も地方創生を目指すために、地方創生拠点整備交付金の対象を近畿圏と中京圏に広げ、首都圏からの転入を推し進める動きもある。その中でポスト東京を目指す、名古屋と大阪の競争は更に激化することが予想される。
しかしこれからの日本に求められるのは、人口やGDPを競い合うことなのだろうか??人口では中国に13倍以上も差をつけられ、GDPでも中国には追い抜かされているのが現状だ。そのような現実を見た上で、資本主義の成長戦略は、少なくともこの国では行き詰まっていると言わざるを得ない。そう考えた時、名古屋には、多くの自然が残っている上に、一方では、名駅や栄などの都会もある。また熱田神宮・伊勢神宮など歴史的な観光地も多い。自然・都会・歴史・文化全てが揃うのが東海地方の魅力だ。2027年のリニア開通に向け、100年後の将来を見据えた、東海地方の地域づくり、街づくりが今、必要となっているのではないか。
参考:国税庁法人番号公表サイト