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名古屋から鉄道で約600キロ、四国一の人口を有する愛媛県松山市。
そんな松山市が1月12・13日にLRTサミット2017が開催されるなど、日本のコンパクトシティの先進例として今注目を集めている。
松山市が日本有数のコンパクトシティで魅力的な都市であると言われているという所以はどこにあるのだろうか?今回、松山に行ってきたので気づいたことを簡単にレポートにまとめてみた。
①都心人口
②公共交通期間の発展
③都市の役割分担
①都心人口
松山市の総人口は514865人であるが、そのうち都心部に住んでいる人口は約30万と言われている。松山市にはこのことからも松山市の人口は都心部に集中していることがわかる。
日本の多くの都市圏は近年、モーターリゼーションによる国道沿いの商業施設の開業や、郊外駅前の再開発事業などにより、都心が空洞化する都市の郊外化、いわゆる「ドーナツ化現象」が問題視されている。
以下の図は平成12~42年にかけての3大都市圏の人口増減自治体別に、色別に表したものである。
東京圏では一部都心部での人口増加が見込まれるものの、名古屋圏や大阪圏の都心部では人口減少が進むと予測される。
平成19年度国土交通白書
図表I-2-3-2 東京圏、名古屋圏、大阪圏における人口増減推計(平成12~42年)
一方で松山市は地方都市の中では人口密度が高く、自動車依存が少ない地域である。中心地に人口がまとまって集中していて、松山市は、自転車・徒歩の割合が高い。
平成19年度国土交通白書
図表I-2-3-12 松山市と長崎市の人口分布と公共交通機関の整備状況
国土交通白書(街の中心部のにぎわいと人々の移動の様子)を見てみるとさらに興味深い調査結果があった。
平成19年度国土交通白書
図表I-2-3-13 通勤・通学、買い物(休日)における交通手段(地球温暖化に関する意識調査(平成19年12月 国土交通省実施)
中心が賑わっている都市に住んでいると答えた人の(通勤・通学)《買い物(休日)》の移動手段の割合は中心が寂れている都市に住んでいると答えた人の(通勤・通学)《買い物(休日)》の移動手段の割合に比べて、圧倒的に公共交通の、自転車、徒歩の割合が高い。このことからも中心地の活性化が、自動車依存との大きく関係していることがわかる。
松山市は公共交通機関も発展しており、都心人口も高いことからも、日本でも有数のコンパクトシティであるといえる。
②公共交通機関の発展
松山市がコンパクトシティになった要因はいくつかある。その1つとして公共交通の発展が松山のコンパクトシティとしての発展に大きく貢献した。
地元私鉄の伊予鉄道は明治20年から続く松山の私鉄で、その歴史は古く明治20年に創立された。
その後戦後の高度経済成長によるマイカーの普及、2000年の大店法の廃止などにより松山市も郊外のロードサイド店やショッピングセンターの進出が相次ぎ、松山を縦横無尽に走る伊予鉄の各路線の乗客数にも当然影響が出た。そこで伊予鉄の最大拠点=愛媛県最大の駅である松山市駅前の再開発事業を行い、それをきっかけに伊予鉄は「サービス向上宣言」を行った。サービス向上宣言は第6弾まで行われ、運賃の値下げ、バス路線の再編などが行なわれた。
平成15年からはいきいき交通街づくり宣言が始まり、拠点駅の整備、駅を中心としたバス路線の整備などを行い公共交通の利用促進を図った。各種改革の中で最も興味深かったものが「おかえり切符」制度と「環境定期券」である。
前者のおかえり切符は鉄道の利用促進と中心市街地の活性化を目的とした制度で、百貨店で3000円以上買い物をした方に電車・バスで使える乗車券「おかえり切符」を無料で進呈するサービスだ。
環境定期券は、定期券所有者とその同居家族は土日祝日年末年始は郊外・市内電車電車とバス前線を1乗車100円でできる制度のこと。
これ以外にも各駅に駐車場を設けてパークアンドライドの推進にも取り組んでいる。
このような伊予鉄の公共交通機関の振興に向けた取り組みが松山の都市構造を変え、コンパクトシティを実現できた1つの要因であると言える。
大街道に停車中の伊予鉄市内線5系統道後温泉行き
③都市の役割分担
松山の都市構造は地域・街単位ごとに役割が明確に現れている。
松山の主要な交通結節点(ターミナル)は主に3つある。
❶JR松山駅
核となる交通機関:JR・高速バスの拠点駅
都市の役割:主に他都市への移動の交通結節点都市
周辺の傾向:支店経済都市としての大企業の支店、JR関連施設、ホテル、マンションなど
❷松山市駅
核となる交通機関:郊外電車・路線バスの拠点駅
都市の役割:主に市郊外と都心を結ぶ拠点駅
周辺の傾向:商業施設、オフィスなど
❸大街道
核となる交通機関:市内電車・路線バス
都市の役割:市内電車の都心駅、観光地と都心を結ぶ
周辺の傾向:商業施設、オフィス、ホテルなど
このことから都市の属性に合わせ、都市が形成されてることが分かる。
一般的に日本の多くの都市は旧城下町や官庁街の集まる中心市街地と中心から少し離れたJR駅で形成されている。これは明治になり全国に鉄道が敷設される際、城下町=市街地を避ける形で鉄道が敷設されたからであろう。そのような事情もありこれまで、多くの都市ではJR(国鉄)の駅前より旧城下町周辺が発展している場合が多かったが、近年、利便性の良さや、立体換地方式による駅前再開発などによりもともと発展していなかったJRの駅前に都市の中心が移動し、古くからの歴史・文化がある中心地がその勢いを失うという現象が地方都市では相次いで起きている。
例えば茨城県の県都水戸では近年駅前の再開発が相次ぎ、駅前一極集中が進み、古くからの中心地の衰退が懸念されている。下記の図は日曜日の水戸市の歩行者通行量の推移のグラフである。2003年と2016年の、官庁街に近い常陽銀行本店前と水戸駅南口の通行量を比べると2003年の常陽銀行本店前の通行量は2132人、水戸駅南口は16357人であったのに対して2016の調査では常陽銀行本店943人、水戸駅南口20234人とその差は2000年代に入っても引き続け、駅ビル一極集中が進んでいることがわかる。
(水戸市歩行者通行量調査・各調査地点の通行量推移について)
このように中心市街地の衰退は多くの地方都市が抱えている問題だ。
しかし松山の街は一極集中しておらず街ごとに役割が分担されており、回遊性の高い都市作りが行われているといえる。
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まとめ
①👉街の統一感
②👉公共交通の発展
③👉街の役割分担
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